「寝酒」。寝付くためにアルコールの助けを借りる人は少なくありません。しかし、お酒がないと眠れないとなると、だんだんとお酒の量が増えます。睡眠の質は低下し、心身ともに健康を害してしまいます。お酒をやめるに越したことはありませんが、やめられない場合でも、不眠の認知行動療法CBT-Iは役に立ちます。
寝付きは良くなるが質は低下する
アルコールで寝付きは良くなるものの、睡眠の質は低下し、中途覚醒が増えます。中途覚醒が増えるのは、トイレが近くなるというだけでなく、アルコールの代謝にも関係しているという説があります。
寝酒はだんだん癖になる
寝付くための寝酒を続けていると、だんだん耐性ができて、必要なお酒の量が増えてしまいます。当然、肝臓にも悪く、発がんリスクが上がります。また、抑うつ的になってしまう人もいます。
アルコール依存症でもCBT-Iは有効
アルコールをやめられていない人でも、CBT-Iは有効です。Miller MB, et al. 2023
不眠症の診断基準を満たす人が、睡眠衛生指導だけだと32%なのに対し、CBT-Iでは59%になります。(アルコール関連の指標に関してはなんともいえない結果ではありますが。。。)
寝酒に頼る人の中には、横になったらすぐに寝付けないといけないと思っている人も少なくありません。健康な人でも30分程度かかるのは自然であることを覚えておいてください。
睡眠リズムを確認すると、現実的に眠れる時間(起床時間の7時間前)よりもだいぶ前から寝付こうとしてお酒を飲んでいることが多いです。そういうときは、刺激統制・睡眠制限の出番です。
Miller MB, Carpenter RW, Freeman LK, et al. Effect of Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia on Alcohol Treatment Outcomes Among US Veterans: A Randomized Clinical Trial JAMA Psychiatry. 2023;80(9):905-913. doi:10.1001/jamapsychiatry.2023.1971 https://jamanetwork.com/journals/jamapsychiatry/fullarticle/2806248
名古屋市立大学医学部卒業後、南生協病院での初期研修を経て、東京大学医学部附属病院精神神経科、東京武蔵野病院で専攻研修。日本専門医機構認定精神科専門医、精神保健指定医。臨床と並行してメタアナリシス(用量反応メタアナリシス、要素ネットワークメタアナリシスなど)を中心とした臨床研究を主導。筆頭著者として、JAMA Psychiatry, British Journal of Psychiatry, Schizophrenia Bulletin, Psychiatry and Clinical Neuroscienceなどのトップジャーナルに論文を発表。不眠の認知行動療法 (CBT-I) などの心理療法や、精神科疾患の薬物療法について、臨床で抱いた疑問に取り組んでいる。
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