不眠の認知行動療法(CBT-I)は、不眠症治療の第一選択ですが、これは医師だけでなく、看護師やその他のコメディカルスタッフによっても提供できます。
コメディカル提供のエビデンス
専門トレーニングを受けたセラピスト(心理士、医師など)による治療が最適とされる一方で、看護師や薬剤師といったコメディカルスタッフも、一定の訓練を受けることでCBT-Iの提供が可能となります。コメディカルスタッフのほうが日常的に患者と接し、生活習慣の改善や患者教育に携わることができるため、治療の継続性や患者のアドヒアランスを高める役割を果たすことができるかもしれません。
看護師が睡眠制限を提供することの有効性を実証したRCTもあります。日本でも、富山大学の長井先生が臨床試験を進めています (2024年8月現在)。協力機関を随時募集中とのことですので、興味ある方はぜひコンタクトを取ってみてください。
多職種連携の重要性
不眠症治療の多くは外来治療ですが、その短時間でCBT-Iを提供できる医師は事実上皆無と言っても過言ではないと思います。CBT-Iを提供できる心理士、看護師などが増え、そこに紹介できるようになると、もう少し多くの方にCBT-Iを提供できるようになるかもしれません。
私は入院環境でCBT-Iを提供したこともあります。その場合は、夜勤の看護師さんに消灯後もベッドで横にならないことを理解して貰う必要があります。日頃から看護師さんと連携を取り、CBT-Iについて理解してもらうことが大切です。(20−21時に消灯になっても、眠れなくて逆効果なんですよね、という話をすると、割とすんなりと理解してくれます)
名古屋市立大学医学部卒業後、南生協病院での初期研修を経て、東京大学医学部附属病院精神神経科、東京武蔵野病院で専攻研修。日本専門医機構認定精神科専門医、精神保健指定医。臨床と並行してメタアナリシス(用量反応メタアナリシス、要素ネットワークメタアナリシスなど)を中心とした臨床研究を主導。筆頭著者として、JAMA Psychiatry, British Journal of Psychiatry, Schizophrenia Bulletin, Psychiatry and Clinical Neuroscienceなどのトップジャーナルに論文を発表。不眠の認知行動療法 (CBT-I) などの心理療法や、精神科疾患の薬物療法について、臨床で抱いた疑問に取り組んでいる。
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