病棟でのCBT-I

精神科病院に入院する患者さんの多くは不眠症を持っています。しかし、入院環境は消灯時間が早く、睡眠のために理想的とは言えません。限られた環境の中で、CBT-Iを応用する工夫をまとめました。

病棟からの信頼を得る

まずは、病棟看護師からの信頼を得ましょう。夜勤帯は人数が少なく、イレギュラーな対応をすることが難しいこともしばしばです。看護師の負担にも十分な配慮が必要です。看護師からの信頼がないのに新しいことをやろうとしても反発されてしまうだけです。

看護師も患者さんのためになるのであればできるだけ協力したいと思っています。不眠を解消することがその患者さんにとって今重要であること、CBT-Iが有効であること、CBT-Iを実施することが病棟の現在の状況で他の患者さんや看護師への負担が大きく問題なさそうであること、などをしっかり説明できれば協力してもらえるかと思います。見回り時にベッドに入っていなくても、それが治療の一環であることを看護師にも理解してもらいましょう。

病棟でできるように工夫する

睡眠制限刺激統制を導入すると、横になるのが23−24時以降になりがちです。病棟の多くは20−21時に消灯というルールになっています。消灯後にどう過ごしてもらうかが工夫のしどころです。

ホールに出る

可能であればホールに出て過ごしてもらいます。ただし、コロナ感染対策だったり、他の患者さんとの公平さのためだったりで難しいこともしばしばです。

椅子に座る

個室など、ベッド脇に椅子があるような環境であれば椅子に座って過ごすようにしてもらいます。大部屋の場合は他の患者さんに迷惑がかからないような時間の過ごし方を考える必要があります。

ベッドに座る

ホールでも過ごせない、ベッド脇に椅子もないという大部屋もありえます。その場合、布団から出て、ベッドの上に座って時間を過ごしてもらいます。東京のワンルームアパートなどで暮らす患者さんの場合、退院後も似たような環境のこともしばしばです。限られた環境の中でもベストを尽くしましょう。

内科など入院中の不眠

精神海外の入院でも不眠の訴えはよくあります。以前から睡眠薬を内服していた場合は継続が無難でしょう。ベンゾジアゼピン系薬剤を減らしたいとは言え、急な減薬・断薬は離脱症状が出るリスクがあります。肝機能・腎機能の変化や内服薬を確認し、併用禁忌や用量に注意してください。

新規に不眠時頓用処方を希望された場合も、処方なしで乗り切れないかも検討しましょう。アラームが鳴ったり、モニターが付いていたりする入院環境においては、安眠できないことが自然であることを伝えるだけでも安心する方もいます。数日で退院が見込まれる場合は、処方なしも選択肢かと思います。ただし、不眠による苦痛が強い場合、入院が中長期にわたりそうな場合、入院環境の調整では改善が見込めなさそうな場合などは、依存リスクの少ないものから試してみましょう。

精神科急性期病棟におけるCBT-Iに関する研究:

Sheaves B, Freeman D, Isham L, et al. Stabilising sleep for patients admitted at acute crisis to a psychiatric hospital (OWLS): an assessor-blind pilot randomised controlled trial. Psychol Med. 2018;48(10):1694-1704. doi:10.1017/S0033291717003191 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29108526/

Sheaves B, Isham L, Bradley J, et al. Adapted CBT to Stabilize Sleep on Psychiatric Wards: a Transdiagnostic Treatment Approach. Behav Cogn Psychother. 2018;46(6):661-675. doi:10.1017/S1352465817000789 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29615140/


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