外来でのCBT-I

忙しい外来の中で不眠の認知行動療法CBT-Iを提供する工夫を共有します。(精神科外来を想定していますが、他の外来でもヒントになるのではないかと思います)

不眠を主題にする

CBT-Iは、CBT-Iを希望して受診する方以外にも効果があります。ただし、導入が上手にする必要があります。初診の場合、私は全例で「夜は眠れていますか?昼は困ってませんか?」と確認しています。再診の場合でも、睡眠と食欲は確認しています。

睡眠に問題がないようであれば、「いいですね。眠れていると心身ともに調子が整いやすいですよね」と伝えて睡眠の話題は終了します。睡眠に問題がありそうであれば、「生活リズムを確認させてください」と伝え、次に進みます。ここで「眠れません」→「じゃあ薬出しておきますね」とすぐ薬を出すのはもちろんNGです。

生活リズムを確認する

まずは、朝起きる時間はある程度一定か確認します。バラバラの場合はどのようにバラバラか確認します。シフト勤務、休日だけ違うリズム、はたまた、一日中横になったり起きたりを不規則に繰り返していることもあります。バラバラの場合は、「まずは起きる時間を一定にできると良いんですけどね」とことわりを入れたうえで、典型的な日、もしくは、昨日の生活リズムを教えてもらいます。(シフトワーカーの場合どうするかは、正直悩ましいところです。)

  • 寝ようと思って横になったのは何時ですか?
  • どれくらいで寝付けましたか?
  • 夜中に起きることはありましたか?何回くらい?合わせて何時間くらい?
  • 朝布団から出たのは何時ですか?
  • 昼は横になりましたか?どれくらいの時間横になりましたか?

など、睡眠日誌をイメージしながら問診します。フォーマルなプロトコルでは1−2週間かけて本人に睡眠日誌を書いてもらいます。しかし、我々の研究では睡眠日誌自体には治療効果が明らかではありませんでした。ですので、軽く短時間で睡眠の状況を把握し、睡眠制限や刺激統制などの有効な手法に早くうつるのが良いと思います。

CBT-Iを紹介する

はじめから不眠が主訴の場合は、「不眠に睡眠薬以上に効く、不眠の認知行動療法というものがあるので、そのエッセンスを伝えようかと思うのですが良いですか?」と前置きしたうえで、睡眠制限か刺激統制のどちらかに重点をおいて説明します。

不眠が主訴でない場合でも、不眠に介入する意義が大きいと判断した場合には勧めます。例えば、「気分の安定のためには、まずは睡眠の安定が大事です」、「ぐっすり眠れると、不安が軽くなりませんか?不安を軽減するためにもまずは不眠に取り組んでみましょう」などと勧めます。

明らかに乗り気でなかったり、育児介護やシフトワークのためにCBT-Iの実践が難しそうな場合でも、「すぐには難しいかもしれませんが、原則だけお伝えさせていただきますね」とことわりを入れて簡単に紹介だけしています。

睡眠制限か刺激統制

入眠困難には刺激統制、中途覚醒には睡眠制限を中心に説明します。私は、朝、昼、夜それぞれ大事なことを1つずつ手書きして渡すようにしています。

  • 朝、起きる時間を一定にしましょう。(目安の起床時間も書く。仕事や学校前提に起きる時間を決めるのが大事)
  • 昼、横にならないようしましょう。(昼寝するとしても、15時までの30分まで)
  • 夜、
    • しっかり眠くなってから横になりましょう。眠れない時は一度布団から出て、しっかり眠くなってから布団に戻りましょう。(刺激統制重視の場合)
    • X時まで横にならないようにしましょう。(X=起床時間-総睡眠時間-30分。ただし、総臥床時間は最低5時間)(睡眠統制重視の場合)

睡眠薬を使うか

睡眠薬を使うかどうかはケースバイケースです。既に使っている場合はまずは継続することが多いです。その場合でも、「眠れるようになって減らせる人も多いですし、そうなるといいですね」などと伝えておきます。まだ使っていない人に関しては、CBT-Iに薬を追加することのメリットは必ずしも明らかではないことを伝えた上で、本人と相談の上で決めます。お守り代わりにほしいという人もいれば、できるだけ薬は飲みたくないという人もいます。


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