不眠症のセルフチェック尺度「SCI」の日本語版を作って公開しました【無料・登録不要】

不眠症の重症度をはかる質問紙に、Sleep Condition Indicator(SCI)というものがあります。8つの質問に答えるだけで、いまの睡眠の状態を点数にできる尺度です。ところがこの尺度には、これまで日本語版がありませんでした。

原著者が非営利での利用を認めているため、日本語に訳して、点数を自動で計算するツールとして公開することにしました。無料で、登録も不要です。まずは実際に触ってみてください。

枠内が窮屈に感じる場合は、全画面で開くと使いやすくなります。

※ 回答は送信されません。すべてお使いのブラウザの中だけで処理され、点数がサーバーに記録されることはありません。

点数の読み方

8つの質問はそれぞれ0〜4点で、合計は0〜32点になります。ひとつだけ、多くの睡眠尺度と逆になっている点にご注意ください。このツールは、点数が高いほど睡眠が良い状態を意味します。

  • 合計16点以下のとき、不眠症の可能性があると考えられます。これが原著の論文で示されている唯一の目安です。
  • 各質問の0〜2点にあたる回答は、DSM-5(精神疾患の診断基準)が不眠症の判断に使う水準に相当する範囲として、原著論文に示されています。ツールでは結果画面でどの項目が該当したかを表示します。
  • 質問3と質問7だけを使う短縮版(SCI-02)もあります。0〜8点で、2点以下のときに不眠症の可能性があるとされています。

結果画面には「17〜24点」「25〜32点」という区切りも表示していますが、これは結果を分かりやすくお伝えするための表示上の目安で、論文で妥当性が確かめられた区分ではありません。ツールの中にもその旨を明記しています。

これは診断ではありません

大事なことなので、はっきり書いておきます。この点数はスクリーニングの目安であって、診断ではありません。点数が低かったからといって不眠症と決まるわけではありませんし、逆に点数が高くても、生活に支障を感じているなら相談する価値は十分にあります。

不眠症という診断は、眠れないという症状だけでは決まりません。日中の生活への影響や、症状が続いている期間、ほかの病気や薬の影響がないかなど、複数の条件を合わせて判断します。そのあたりの考え方は不眠症とはどういう状態を指すのかを解説した記事で詳しく書きました。

睡眠の困りごとが3か月以上続いていて、日中の生活にも影響が出ているようなら、精神科・心療内科・睡眠外来などにご相談ください。不眠症には不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)という有効な治療法があり、多くのガイドラインで最初に検討すべき治療として推奨されています。

なぜ日本語版を作ったのか

SCI は2014年に発表された尺度で、DSM-5 の不眠症の考え方に沿って作られています。項目が8つと短く、日中への影響や症状の持続期間まで含めて聞ける点が特徴です。

この尺度には、もうひとつ珍しい性質があります。原著者が、非営利での利用を無償で認めているのです。Insomnia Severity Index (ISI) を含む多くの質問紙は権利者への使用許諾の申請が必要で、有償のこともあります。SCI はクリエイティブ・コモンズのライセンス(CC BY-NC 4.0)で公開されており、条件を守れば翻訳して公開することも認められています。

調べたかぎり、検証済みの日本語版は見当たりませんでした。

この訳の限界

この日本語版は、言語的な妥当性の検証を経ていない暫定的な訳です。

順翻訳と逆翻訳はしましたが、実際の回答者に「この質問文をどう理解しましたか」と尋ねる調査や、日本語版としての信頼性・妥当性を統計的に確かめる作業は行っていません。ツールが表示する「16点以下」という目安も、英語版で得られた数字であって、日本語版で同じ値が当てはまるかは分かっていません。原著者の公認を受けた訳でもありません。

ですので、あくまで「おおよその目安をつかむための道具」として使っていただければと思います。日本語版の妥当性を検証する研究には関心があるので、ご興味のある方はご連絡ください。

診療や研究で使いたい方へ

紙で使えるようにA4の PDF を用意しました。印刷して配っていただいて構いません(非営利の範囲でお願いします)。採点方法と解釈の注記、権利表示も同じ紙面に入れてあります。

研究で使われる場合は、原著と日本語版の両方を引用してください。また、妥当性検証を経ていない暫定訳であることを論文中に明記していただけると助かります。引用の書式はツールの画面内にも用意しています。

回答データについて

睡眠の悩みは、人に知られたくない種類の情報です。そのため、このツールは回答をどこにも送らない作りにしました。採点はすべてブラウザの中で行われ、外部への通信は一切ありません。

点数を URL に埋め込む方式も採用していません。点数が URL に入ると、ブラウザの履歴に残り、SNS に貼ったときにそのサービスへ内容が渡り、アクセスログにも記録されてしまうためです。結果を残したいときは、画像として保存するか、文字としてコピーするか、ご自身の端末にだけ保存するか(同意していただいた場合のみ)を選べるようにしています。

同じ考え方で作った睡眠スケジュール計算ツールも公開しています。こちらは不眠の認知行動療法の考え方にもとづいて、入床・起床時刻の目安を計算するものです。

参考文献

  1. Espie CA, Kyle SD, Hames P, Gardani M, Fleming L, Cape J. The Sleep Condition Indicator: a clinical screening tool to evaluate insomnia disorder. BMJ Open. 2014;4(3):e004183. PubMed
  2. Luik AI, Farias Machado P, Siriwardena N, Espie CA. Screening for insomnia in primary care: using a two-item version of the Sleep Condition Indicator. Br J Gen Pract. 2019;69(679):79–80. PubMed

権利表示

Sleep Condition Indicator の著作権は Sleepio Limited が保有しています(© Sleepio Limited)。本ツールおよび日本語訳は、クリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 4.0 国際(CC BY-NC 4.0)のもとで、古川由己が日本語に翻訳・改変したものです。原著者による承認を示すものではありません。


この記事は医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。症状が気になる場合はかかりつけ医または専門医にご相談ください。
著者の見解は個人のものであり、所属機関の見解を代表するものではありません。