睡眠の現状を把握しよう:睡眠日誌をイメージしながら

皆さんはいつも何時に起きていますか?ある程度一定でしょうか。バラバラでしょうか。家庭や仕事の事情でなかなか思い通りにならない方も多いでしょう。ここでは、不眠の認知行動療法 (CBT-I) を行う際に睡眠の現状をどのように確認しているかご紹介します。

睡眠日誌

睡眠の現状を把握するためによく使われるのが睡眠日誌 sleep diary です。「睡眠日誌」で検索していただけると、国立精神・神経医療研究センターのウェブサイト (2024.08.07確認) などから書式がダウンロードできます。何時に横になるか、何時から眠れたか、などを書き込むことで、生活リズムや、睡眠に関連する重要な値 (睡眠効率、入眠潜時、中途覚醒など) を把握することができます。

典型的なCBT-Iのプログラムでは最初の1−2週間はこの現状把握に使われますが、私達の研究で睡眠日誌自体に治療効果があるわけではなさそうであることがわかりました。なので、私は初回では睡眠日誌を意識しながら口頭で生活リズムを確認するにとどめ、できるだけ早くから治療効果の高い睡眠制限刺激統制などを導入するようにしています。口頭で確認するときは、下記の質問をしています。

  • 起きる時間は一定ですか?バラバラですか?

バラバラであれば、バラバラとなってしまう理由について確認し、典型的な一日のリズムを確認します。起床時間を一定にすることが重要であることを伝えつつ、シフトワーカーだったり、認知症の家族の介護だったり、思い通りにいかない事情にも配慮が必要です。

  • 何時に横になりますか?
  • 眠りにつくのにどれくらい時間がかかりますか?
  • 何回くらい目が覚めますか?
  • 途中目が覚めている時間は合計するとどれくらいですか?
  • 朝何時に目が覚めますか?
  • 布団から出るのは何時ですか?
  • 日中横になることはありますか?合わせるとどれくらいの時間ですか?

睡眠効率

睡眠効率は、総睡眠時間を、総臥床時間で割った値です。これが85%以上が良い睡眠の目安とされています。不眠で悩んでいる方の多くは、なんとか睡眠時間を長くしようと、臥床時間を長くしがちで、睡眠効率が著しく低下してしまうことがあります。睡眠効率が低い人には、睡眠制限や刺激統制が特におすすめです。

入眠潜時

入眠潜時は、横になってから実際に眠るまでの時間です。「寝る」という日本語が、「横になる」という意味と「眠る」という意味の両方を指しうるので、意識して区別する必要があります。30分以内が良い睡眠の目安とされています。

中途覚醒

中途覚醒は、一度寝てから起きる回数・総時間です。途中1−2回起きてしまうことを悩む方もいますが、ある程度の年齢になると1−2回起きること自体は正常です。回数が多かったり、なかなか眠りに戻れなくて辛い場合に問題になります。

入眠潜時が問題なときは刺激統制、中途覚醒が問題なときは睡眠制限から始めるのが良いでしょう。


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