- 1−2時間毎に目が覚めてしまう
- 一度目が覚めるとなかなか眠れない
一度寝付くことができても、その後に何度も目が覚めてしまう中途覚醒で悩む方は少なくありません。薬で早く寝付けても、その後に結局起きてしまうといこともよくあります。
そんな時は、不眠症に有効な不眠の認知行動療法CBT-Iの中でも特に、睡眠制限 sleep restrictionと呼ばれる手法ががおすすめです。睡眠制限単体でも効果が実証されており、私達が行った、CBT-Iのスキルの中で有効な要素を探る研究でも有効性が示されました。
「寝られるようになりたいのに睡眠制限とはどういうことだ!」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、有効性が高く、しかも内容はシンプルなので、ぜひトライしてみてください。
睡眠制限
睡眠時間、臥床時間を把握する
まず、一日の睡眠時間の合計を計算します。フォーマルなやり方では、睡眠日誌を1−2週間つけてもらい、その平均を使いますが、それだと時間がかかってしまいます。直近数時間の平均で構いませんので、1日の間で何時間横になっていたか(臥床時間)、何時間眠れていたか(睡眠時間)を計算してください。
次に、起床時間を決めます。休日も含めて起床時間を一定にすることがコツです。
臥床時間を睡眠時間+30分にする
最初は1日の臥床時間を、総睡眠時間+30分(ただし、最低でも5−6時間)にします。次に、起床時間から臥床時間を引いて、横になる時間を決めます。それまで横にならないようにしましょう。
睡眠効率が90%以上
1週間平均で、睡眠効率 (= 睡眠時間 / 臥床時間 ) が90%以上であれば、臥床時間を15分延ばします。
睡眠効率が85-90%
1週間平均で、睡眠効率が85-90%であれば、臥床時間はそのままにします。
睡眠効率が85%未満
1週間平均で、睡眠効率が85%未満であれば、臥床時間を15分短くします。ただし、5時間より短くはしないようにします。
以上を繰り返す
やり方は非常に単純で、以上を毎週繰り返すだけです。はじめ眠くて辛くなる人ほど、その後眠れるようになります。4週以内で改善傾向が見られる方がほとんどです。何週間も連続で睡眠効率が85%未満となる場合は、カウンセラーと生活リズムの現状確認をして、作戦を立て直すのが良いかと思います。
睡眠制限に抵抗のある方へ
ここまでの内容を読んで、「睡眠効率なんて効いたことのない数字を上げたいと思っているのではなく、とにかく少しでも睡眠時間を長くしたいのだ!」「そのために臥床時間を長くすることが当然だ」と思われるかもしれません。睡眠制限のやり方は非常に単純で、しかも効果は大きいです。横になる時間が長すぎると睡眠がどうしても浅くなったり、途中目が覚めたりしてしまうのです。睡眠制限に抵抗のある方のために、もう少し説明をしようと思います。
何時間くらい寝られると良いと思っていますか?もともと長く寝られていたという方も、歳を重ねるとともに、段々と必要な睡眠時間は短くなってきます。必要な睡眠時間については、年令によって変わるだけでなく、個人差も大きく、さらに体調によっても増減します。多くの場合、寝られて6−7時間です。
例えば9時間横になっている場合、6時間寝られたらまずは十分なので、3時間は眠れない時間があっても不思議ではありません。この眠れない時間が、横になってすぐに出てくると寝付きが悪いということになります。逆に根付きが悪くないと、この眠れない時間があとからやってきて、中途覚醒や早朝覚醒になってしまうのです。
長さが決まっているものを引き延ばそうとすると、ブチブチブチと切れてしまうでしょう。臥床時間が長くなると、睡眠も細切れになってしまうのです。これをつなげて寝ようと思うと、ギュッと横になる時間を短くするのが大事です。
名古屋市立大学医学部卒業後、南生協病院での初期研修を経て、東京大学医学部附属病院精神神経科、東京武蔵野病院で専攻研修。日本専門医機構認定精神科専門医、精神保健指定医。臨床と並行してメタアナリシス(用量反応メタアナリシス、要素ネットワークメタアナリシスなど)を中心とした臨床研究を主導。筆頭著者として、JAMA Psychiatry, British Journal of Psychiatry, Schizophrenia Bulletin, Psychiatry and Clinical Neuroscienceなどのトップジャーナルに論文を発表。不眠の認知行動療法 (CBT-I) などの心理療法や、精神科疾患の薬物療法について、臨床で抱いた疑問に取り組んでいる。
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