不眠の認知行動療法(CBT-I)はどこで受けられる? 5つの選択肢を比較

「不眠の認知行動療法(CBT-I)が良いらしい」と聞いて調べてみたものの、ではどこで受けられるのかがわからない——そういうご相談をよくいただきます。

実際、日本ではこれまで CBT-I を受けられる場所がかなり限られてきました。ただ、2026年6月から状況が少し変わっています。この記事では、いま日本で CBT-I を受ける方法を5つに整理し、費用と条件で比較します。

2026年6月から、条件を満たす方はCBT-Iを保険で受けられます。当てはまらない場合は自費・オンライン・本の3択です。

前提:CBT-I とは何か

CBT-I(不眠症の認知行動療法)は、睡眠薬を使わずに、眠りに関する行動と考え方を調整していく治療法です。ベッドで過ごす時間を睡眠に合わせて調整する臥床時間制限法や、ベッドと眠りの結びつきを取り戻す刺激統制法など、いくつかの要素を組み合わせて行います。

米国睡眠医学会(2021年)も欧州睡眠学会(2023年)も、慢性不眠症の大人に対する第一選択の治療として CBT-I を推奨しています[1][2]。睡眠薬より先に試すべき治療、という位置づけです。

CBT-I そのものの中身は不眠症の認知行動療法(CBT-I)とはで、治療全体の流れは不眠症の治し方の全体像で詳しく解説しています。そもそも自分は不眠症なのか迷う方は不眠症とは何かもあわせてご覧ください。

ただし、私たちが241件の臨床試験(約3万1千人分)を解析した研究では、もっとも効果的な組み合わせを対面で受けた場合でも、不眠がなくなるところ(寛解)まで至るのはおよそ4〜5割という推定でした[3]。十分に良くならない方もいます。(それでも、現時点でもっとも根拠が積み上がっている治療であることは確かです。)

5つの選択肢を比較する

日本で CBT-I にたどりつく道は、大きく5つあります。まず全体を一覧で見てみましょう。横にスクロールできます。

なお、④と⑤は私自身が関わっている選択肢です(④は私が共同開発した有料プログラム、⑤は私の著書で、Amazon のアフィリエイトリンクを含みます)。そのうえで読んでいただければと思います。

選択肢 費用の目安(自己負担) 受けられる条件・ハードル 誰が提供するか 自分で進める度合い エビデンス
① 保険診療の CBT-I 1回あたり約1,440円(3割負担・480点の場合)。別途、初診料・再診料などがかかります うつ病または不安障害を合併した不眠症、あるいは2種類以上の睡眠薬でも効果が不十分と医師が判断した不眠症。施設基準を届け出た医療機関のみ。一連の治療で8回まで 保険医療機関の医師(公認心理師が加わる形もあります) 低い(対面で伴走してもらえます) ガイドラインが第一選択として推奨
② 保険適用の治療用アプリ アプリの材料費 24,100円の3割で約7,230円。別途、指導管理料と診察料がかかります 軽症から中等症の不眠障害で、薬物療法に適さない、または希望しない方。睡眠障害の治療薬を服用中の方、精神疾患のある方などは対象外。研修を修了した医師のいる医療機関のみ 保険医療機関の医師(処方を受けて自宅で使用) 中くらい(日々の記録はご自身で) 臨床試験を経て薬事承認・保険適用
③ 自費のクリニック・カウンセリング 施設によって大きく異なります。受診前に各施設へご確認ください 保険の条件を満たさなくても受けられることが多い一方、提供している施設が限られます 医師・公認心理師・臨床心理士など 低い(対面で伴走してもらえます) 内容が CBT-I であれば同様
④ オンラインプログラム
著者が共同開発
33,000円(税別。税込36,300円)。最新の金額はプログラムのページでご確認ください 医療機関への通院が不要。診断・治療そのものではないため、症状が重い場合は受診が優先されます カウンセラー等(医療機関ではありません) やや高い(課題は自分で進めます) CBT-I の考え方に沿った構成
⑤ 本で自分で進める
著者の著書・アフィリエイトリンク
書籍代のみ 今日から始められます。うまくいかないときに相談する相手がいません なし(ご自身で) 高い(すべて自分で進めます) セルフヘルプ型でも一定の効果が報告されています

以下、ひとつずつ見ていきます。

① 保険診療の CBT-I(2026年6月から)

2026年(令和8年)度の診療報酬改定で、「認知療法・認知行動療法」という診療報酬の対象疾患に不眠症が追加されました[4]2026年6月1日からの施行です。それまではうつ病などの一部の病気に限られていたので、不眠症にとっては大きな変化です。

誰が受けられるのか

厚生労働省の通知では、対象となる不眠症の患者さんは次のいずれかとされています[5]

  • うつ病もしくは不安障害が合併した不眠症の方
  • 2種類以上の睡眠薬を使ったうえで、治療効果が不十分だと医師が判断した不眠症の方

残念ながら、原則的には「眠れないので相談に行ったら、初回からすぐ保険で 対面CBT-I」という形にはなりません。

費用と回数

診療報酬点数は、医師が行う場合が480点です[5]。1点10円なので4,800円、3割負担なら1回あたり約1,440円となります。これに加えて、初診料・再診料などが別途かかります。合計でいくらになるかは受診先によって変わりますので、医療機関にご確認ください。

このほか、公認心理師による心理支援を伴う場合が330点として今回新設されました。なお、医師と看護師が共同して行う場合(350点)は、うつ病等の気分障害の患者さんに限られており、不眠症では使えません[5]

回数には上限があります。不眠症では、一連の治療につき8回までです(他の病気では16回まで)。また、1回につき30分を超える面接であることが保険支払の条件です。[5]

どこで受けられるのか

この診療報酬は、施設基準を地方厚生局に届け出た保険医療機関でしか算定できません。近所の医療機関ならどこでも、というわけではないのが実情です。探し方は後ろの「対面で受けられる場所をどう探すか」で説明します。

うつ病等の気分障害に対する認知療法・認知行動療法は2010年(平成22年度改定)に保険適用となりましたが、その後も実施している医療機関は限られたままでした。保険適用からの6年間(2010〜2015年度)に受けた患者さんの数は増えず、47都道府県のうち32府県では人口あたりの受療者数が減るかゼロのままでした[6]。2015〜2021年度を対象とした解析でも、対象となる診断がついた方のうち実際に保険で受けられたのは0.2〜0.5%にとどまっています[7]。1回30分を超える面接を繰り返し行う形は診療の枠組みとして病院側の負担が大きく、実施できる体制のある施設が限られるためだと考えられます。不眠症でも似た経過をたどる可能性があると、私は考えています。特に、物価高の中で医療機関はどこも経営が厳しく、この保険点数で積極的に実施しようと思うところは限られると予想されます。保険適用になったこと=すぐ近所で受けられるようになったこと、ではありません。

ポイント
保険で CBT-I を受けるには、(1)対象となる状態であること、(2)施設基準を届け出た医療機関であること、(3)1回30分を超える面接であること——この3つがそろう必要があります。条件が細かいので、受診前に医療機関へ「不眠症の認知行動療法を保険で受けられますか」と問い合わせるのが確実です。

② 保険適用の治療用アプリ

不眠障害の治療を支援するアプリ(プログラム医療機器)が、2026年6月1日から保険適用になりました[4]。薬事承認自体は2023年2月に受けていましたが、保険で使えるようになったのは2026年6月からです。

医師の処方を受けて、ご自身のスマートフォンで CBT-I の内容を進めていく仕組みです。使用にあたっては、日本睡眠学会の適正使用指針(第3版、2026年5月11日)に沿って使われることになっています[8]

対象になる方・ならない方

厚生労働省の通知では、対象は入院中以外の方で、薬物療法に適さない、または薬物療法に同意しない、軽症から中等症の不眠障害の方とされています[5]

そして、2026年現在、次のいずれかに当てはまる方は対象外です。(医学的エビデンスとはまた別に制度上の決まりごとという面も強いのですが。。。)

  • 睡眠障害の治療薬を2種類以上服用している
  • 精神疾患に罹患している
  • 中等度以上の身体疾患に罹患している
  • 不眠障害以外の睡眠・覚醒障害に罹患している
  • 交代勤務・夜勤に従事している
  • 医師が不適当と判断した
とくに注意していただきたい点
すでに睡眠薬を2種類以上飲んでいる方は、保険でこのアプリを使う対象から外れます。「薬をやめたいからアプリを使いたい」という順番では条件に当てはまらない、ということです。ここを誤解したまま受診すると、期待とちがう結果になってしまいます。

費用と使い方の流れ

アプリは特定保険医療材料「不眠障害治療支援アプリ」として24,100円の価格がつけられています。これは保険上の価格(総額)なので、3割負担なら約7,230円です。このほかに、プログラム医療機器等指導管理料(月1回、90点。初回月のみ導入期加算50点)と、診察料がかかります[9][5]

使い始める前に、7日間の睡眠日誌を含む睡眠衛生指導を受けることが必要です。そのうえで、1回に限り算定できる仕組みになっています。

また、処方できるのは、不眠障害の認知行動療法またはこのアプリの適正使用に関する研修(6時間以上、修了証あり)を修了した医師です。修了証は院内に掲示され、原則としてウェブサイトにも掲載されることになっています[5]

③ 自費のクリニック・カウンセリング

保険の条件に当てはまらない場合、自費で CBT-I を提供している医療機関やカウンセリングルームを探す、という選択肢があります。

費用については各施設が設定しています。基本的には50〜60分1コマ1万円前後、全体で6〜8コマということが多いかと思います。施設によって大きく異なりますので、受診前に各施設に直接ご確認ください。

目安のイメージだけでも持っておきたいという方は、個別の施設の実例をもとに試算した記事を書いていますので、CBT-I の費用はいくらかかるのかをご覧ください。あくまで実例をもとにした試算で、相場を示すものではありません。

④ オンラインプログラム

通院しなくても、オンラインで CBT-I の考え方に沿ったプログラムを進める方法もあります。

あまりにCBT-Iを受けることのできる場が限られているため、私は「うららか相談室」と共同開発した有料プログラムを監修しました。オンラインで、カウンセラーのサポートを受けながら CBT-I の各ステップを進めていく構成です。

うららか相談室:不眠の認知行動療法(CBT-I)プログラム

※ 著者がうららか相談室と共同開発した有料プログラムです。

このプログラムを作った経緯はオンラインカウンセリングで CBT-I を提供しますに書いています。

ただし、オンラインプログラムは医療機関での診断・治療そのものではありません。眠れないことで日中の生活が大きく損なわれている場合や、気分の落ち込みが強い場合は、まず医療機関の受診も検討してください。

⑤ 本で自分で進める

もっとも手軽に、今日から始められる方法です。CBT-I はセルフヘルプ型(本やワークブックで自分で進める形)でも一定の効果が報告されています。ただし、先ほどの解析でも、もっとも効果が大きかったのは治療者が対面で伴走する形でした[3]。本から始める場合は、その点を織り込んでおいてください。

私が書いた医療者向けの書籍として、『ねころんで読める不眠症』(メディカ出版)があります。

※ Amazon のアフィリエイトリンクを含みます。

本で進める場合の弱点は、うまくいかないときに相談する相手がいないことです。臥床時間制限法は、始めてしばらくは日中の眠気が強くなることがあります。ひとりで進めていて不安になったら、いったん立ち止まって医療機関に相談してください。

対面で受けられる場所をどう探すか

ここがいちばん難しいところです。残念ながら、「不眠症の CBT-I を実施している医療機関」を一覧で調べられる公的な検索サイトは、現時点ではありません。

迷ったときの選び方

状況別に、最初に検討する順番の目安をまとめます。

  • 近くに実施している医療機関が見つからない方:④のオンライン、または⑤の本から始めるのが現実的です。
  • 費用をできるだけ抑えたい方:⑤の本から始めて、うまくいかなければ③④、という順番が無理がありません。
  • まず自分が不眠症なのかを確かめたい方不眠症とは何かを読んでから考えても遅くありません。

よくある質問

保険の条件に当てはまらないと、CBT-I は受けられませんか

いいえ。保険で算定できないだけで、CBT-I 自体は受けられます。自費のクリニック・カウンセリング(③)、オンラインプログラム(④)、本で自分で進める方法(⑤)があります。

睡眠薬を飲んでいますが、治療用アプリは使えますか

保険で使う場合の対象からは外れます。通知では「睡眠障害治療薬を2種類以上服用している」方は対象外とされています。睡眠薬を減らしたい・やめたいという希望がある場合は、まず主治医に相談してください。相談の材料として、睡眠薬の種類ごとの依存リスクと長期使用の安全性を整理した記事もあわせてご覧ください。

CBT-I はどのくらいで効果が出ますか

効果の出方には個人差が大きく、「何週間で」と一律にお伝えできるものではありません。治療の枠組みとしては、保険診療では不眠症の場合、一連の治療につき8回までという上限が設けられています。なお、臥床時間制限法を始めてしばらくは日中の眠気が強くなることがあります。これは想定される経過ですが、つらいときは自己判断で続けず、担当の医師や心理職にご相談ください。

効かなかったらどうすればいいですか

CBT-I を受けても、不眠がなくなるところまで至るのはおよそ4〜5割です[3]。十分に良くならない方もいます。うまくいかない場合は、進め方が合っていない可能性、別の睡眠障害が隠れている可能性、他の病気が影響している可能性などがあります。自己判断で続けるより、一度医療機関で相談してください。

オンラインや本だけでも意味はありますか

セルフヘルプ型の CBT-I にも一定の効果が報告されています。ただし、対面で伴走してもらう形に比べると、途中で続かなくなる方が多いのも事実です。まず本から始めて、行き詰まったらオンラインや対面に切り替える、という進め方でも問題ありません。

情報の時点について
保険・費用に関する記述は2026年7月時点の制度に基づきます。金額は3割負担の場合で計算しています(自己負担の割合は年齢や所得により1〜3割です)。診療報酬は改定されるため、最新の情報は受診先の医療機関にご確認ください。

参考文献

  1. Edinger JD, et al. Behavioral and psychological treatments for chronic insomnia disorder in adults: an American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline. J Clin Sleep Med. 2021;17(2):255-262. doi:10.5664/jcsm.8986
  2. Riemann D, et al. The European Insomnia Guideline: An update on the diagnosis and treatment of insomnia 2023. J Sleep Res. 2023;32(6):e14035. doi:10.1111/jsr.14035
  3. Furukawa Y, et al. Components and delivery formats of cognitive behavioral therapy for chronic insomnia in adults: a systematic review and component network meta-analysis. JAMA Psychiatry. 2024;81(4):357-365. doi:10.1001/jamapsychiatry.2023.5060
  4. 令和8年度診療報酬改定について(厚生労働省)
  5. 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(医科)(PDF。訂正のたびにファイルが差し替わるため、リンク切れの際は上記の改定ページからお探しください)
  6. Hayashi Y, et al. How was cognitive behavioural therapy for mood disorder implemented in Japan? A retrospective observational study using the nationwide claims database from FY2010 to FY2015. BMJ Open. 2020;10(5):e033365. doi:10.1136/bmjopen-2019-033365
  7. Mukai K, et al. The provision of cognitive behavioral therapy in Japan: an analysis using insurance claims data. BMC Psychiatry. 2025;25(1):878. doi:10.1186/s12888-025-07316-y
  8. 日本睡眠学会 不眠障害用アプリ適正使用指針(第3版、2026年5月11日)(PDF)
  9. 特定保険医療材料及びその材料価格(材料価格基準)の一部改正等について(保医発0529第2号)(PDF)